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ひとりの起業家が作り上げたアートの「形」とは? T2 Collection「Collecting? Connecting?」展レポート

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寺田倉庫が運営する芸術文化発信施設の「WHAT MUSEUM(ワットミュージアム)」でT2 Collection「Collecting? Connecting?」展がスタートしました。本展は、株式会社ブレインパッドの共同創業者・高橋隆史氏によるコレクション展で、高橋氏が最初に購入した作品や近年惹かれているコンセプチュアルな作品を中心に36点が展示されています。

「?」からはじまるのが楽しい、コンセプチュアルアート

芸術を概念化するコンセプチュアルアートは、その作品の制作背景や意図を知って理解を深める必要があるものが多く、アート鑑賞に慣れていない人は「よく分からない」「難しい」で終わってしまうこともしばしばあります。本展では、コンセプチュアルアートのハードルを下げ、鑑賞をより楽しめるような仕組みが散りばめられています。

T2collection

SPACE1では、ミニ四駆やバスケットボール、デジタルの数字など私たちの生活の中で身近なものが作品へと昇華された時、どのようなメッセージ性が生まれてくるのかを問いかける展示空間になっています。

やんツーの作品では、3台の自動車型玩具の「ミニ四駆」が“どれだけ遅く走れるか”を円形のコースで競っています。本来速さを競って走らせるはずのミニ四駆の概念を180度転換し、私たちが持つ競走に対するイメージを覆してきます。

やんツー

壁面にある宮島達男のキャンバス作品《Paiting of Change – 003》は、作品に付属する0から9までマス目のあるサイコロを鑑賞者が振って、その出た目にあわせて作品を組み替えるというもの。決して止まることのない時間に第三者が手を加えるとはどういうことか? 実際にサイコロを振ってみたら、また作品の見え方も変わるかもしれません。

宮島達男

また、作品と一緒に「ミニ四駆?」「数字?」などの言葉が記された大きなバナーが本展覧会の特徴のひとつ。まずは疑問を持ってゆっくりと作品と対峙したあと、バナーの裏側にある作品解説を読みます。その前後でどんな気付きを得られるのか、鑑賞者自身の感情の変化を楽しみ、作品への理解を深められる空間になっています。

新たな出会いを繋ぐ点と点

2階に上がると彫刻作品やインスタレーション、絵画作品など幅広いジャンルの作品が展示されています。高橋氏がアート作品の収集をはじめたのは約6年前。ひょんなことから初めの一点であるベルナール・フリズの作品を購入し、気づいたらアートの沼にはまり、「コレクター」と呼ばれるようになっていたと言います。

長田綾美
T2collection
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高橋氏は2004年にデータ活用の重要性と国レベルでの準備不足を感じて起業をしましたが、当時はまだビッグデータという概念すらなく、その重要性を説いても賛同してくれる人は少なかったそう。まだこの世に存在していない、あるいは浸透していない新しいことに挑戦する。つまり「0を1にする」を実践してきた高橋氏ですが、そういった起業家としての自分の在り方と、自分の考えや感情、価値観を形にして世に出す作家の姿勢に通じるものを感じ、共感したと言います。

takahashi takafumi

高橋氏のコレクションの特徴ともいえるのが、作家が新たな挑戦として制作した作品や、若手作家による作品のコレクションに力を入れていることです。例えば、鬼頭健吾の《Light in Emptiness》は、平面とインスタレーションを繋ぐ表現を模索するという作家のチャレンジングな姿勢に感銘を受け、「応援したい」という気持ちでコレクションに迎え入れた作品だといいます。

また、江上越の《にじいろーKusano Takafumi》は、高橋氏の起業家というアイデンティティをダイレクトに表す作品ともいえるでしょう。これは起業家100人を描く作品シリーズのうちの1点で、100人のうちの最初の数人に名を連ねて描かれた肖像画です。江上越は対話のなかで「雪の中の紳士」や空から大地を俯瞰する「鷹」をイメージして制作したそうです。

T2collection

そうやって作家と作品との出会いを重ね、自分の琴線に触れるものを1点1点買い集めていくうちに、今回の展覧会を開催するまでに至りました。高橋氏はコレクターズノートでこのように語っています。

『何の繋がりもない点の集まりである。どうかあまり構えずに作品1点1点と気軽に向き合っていただければと思う。そうして、もし、あなたにとって出会いと感じられる体験が1つでもあったのであれば嬉しい。それは、新たな繋がりを意味するのだから。』
(コレクターズノート / 高橋隆史より一部抜粋)

点同士に繋がりがなくても、点を俯瞰して繋げて見てみるとひとつの「形」が浮かび上がります。その形は紛れもなく点を集めてきた本人にしか作り得ないものです。一人のコレクターが築き上げた形から、自分だけの新たな出会いを体験しに行ってみてはいかがでしょうか。

また、同会場で同時開催中の奥中章人による「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展もお見逃しなく。最大直径12メートルのバルーン状のインスタレーション作品で空気、水、光といった「形のない」存在を体験することができます。

what museum

T2 Collection「Collecting? Connecting?」展

会期:2024年10月4日〜2025年3月16日
会場:WHAT MUSEUM
住所:東京都品川区東品川2-6-10 寺田倉庫G号
開館時間:11:00〜18:00 ※入館は閉館の60分前まで
休館日:月(祝日の場合翌火)、年末年始
料金:一般 1500円 / 大学生 800円 / 高校生以下無料
※同時開催の展覧会 奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展の観覧料を含みます
HP:https://what.warehouseofart.org/


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文・写真:千葉ナツミ